グローバル競争が激化する中で、地域経済の活性化の主役は中小企業である。規模の大きな中小企業は自らでネットワークを構築できるが、小・零細企業の場合は人材不足で難しい。とりわけ小・零細企業のネットワーク化は地域経済の再生にとって重要な課題である。 本稿はネットワーク化が難しいとされる東大阪市の小・零細企業のネットワークグループである「ヒット」の10年を分析したものである。ヒットの10年の足跡を分析することで明らかとなったのは、小・零細企業のネットワーク化には業者間で「信頼財」を蓄積することであった。この「信頼財」は業者間のコミュニケーション、協働での業者の取り組みなどである。この「信頼財」が基盤とならない限り、新製品開発などの新しい取り組みは継続的にうまくいかないのである。10年も続くネットワーク「ヒット」と他のグループの活動を見ると明らかに違う。 この「信頼財」は東大阪と名古屋地域で比べると、大いに違っていた。東大阪の小・零細企業の業者は、家電製品など様々な分野のものを生産するので、いつでも部品の生産がストップする「危機感」に直面している。部品生産の仕事がなければ、「自らが新しいものをつくろう」となり、横のネットワークを構築しようとする。他方、計画的に絶えず自動車部品を生産している愛知の小・零細業者は、「自らが新しいものをつくろう」と業者同士でネットワークをつくる必要性を感じない。愛知では縦の「信頼財」は形成できるが、小・零細業者間の横のつながりによる「信頼財」は構築されにくく、横のネットワーク構築には東大阪とは違った「信頼財」構築の展開が必要である。
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