成長著しい中国華南の珠江デルタの研究目的に沿って、今年度は、視野を広げて多国籍企業によるグローバル戦略と、それがメキシコ国境地帯・珠江デルタなど局地的経済圏形成に及ぼす影響について研究成果を公刊した。共編著『競争と規制の経営学』では、序章・終章で規制緩和と競争戦略の国際的影響について理論的に考察するとともに、第5章でエアラインの世界的なネットワーク型グローバル戦略の特性を考察した。また、共編著『テキスト多国籍企業論』を刊行し、第3章「多国籍企業の理論」ではアジアにおける雁行型発展以後の最新の多国籍企業学説を検討し、5章では「NAFTAとアメリカ多国籍企業」として、地域的経済統合としてのNAFTAを中心に、中国珠江デルタとの比較のもとに、アメリカ多国籍企業のグローバル戦略と進出先地域における産業集積・クラスター形成の特質と問題点について解明した。とくに、中国華南における順徳(Shunde)の定点観測から汎珠江デルタ経済圏に発展させるための研究論文としては、中国広東省・珠江デルタの現地調査に基づき、「珠江デルタ・順徳における家具産業クラスターの発展」を発表した。これにより、世界最大規模の順徳家具産業の発展史を切り口として、珠江デルタの飛躍的な産業発展と順徳など多彩で特色ある地域産業クラスター形成の歴史的基盤と現状=発展段階を詳細に解明できた。こうした課題に関連して、香港一恵州と東岸のハイテク産業集積の実態、広州近郊に進出した日系3大自動車メーカーの工場建設・「華南のデトロイト」化構想の実態調査を年度末の2007年3月下旬に実施したことは、次年度の新たな研究の発展に展望を与えるものとなっている。
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