研究概要 |
デジタル家電製品は,その製品アーキテクチャー特性がもたらすグローバル競争圧力の強さ,およびデバイス生産において規模の経済性効果が大きいこと,さらに主要デバイスである半導体において微細加工の世代進行に伴うコスト低減効果が大きいこと,などを特徴とする。これらの要因を背景として,当該製品価格は下落スピードが著しく速く,この下落スピードに対して後手に回ると利益獲得が困難になるばかりか,開発費用の回収さえ危うくなり,次の技術開発に必要な資金力を失うという特質を持つ。それゆえ,デジタル家電における有効な競争行動は,製品開発・新機種開発においても開発された製品・新機種の量産移行においても,価格下落に先行しうるだけの経営の迅速性を確保するものでなければならない。 平成17年度の研究では以上の競争構造的特質を摘出した。平成18年度には,この競争行動の先進事例となる企業行動を取り上げ,デジタル家電向けシステムLSIの開発過程を事例分析した。発見された事実は,その迅速かつ効果的な開発過程においては,企業グループ・企業各部門間に分散する経営知識・人的資源を組織の枠を超えて効果的に融合する組織対応を意識的にとったことが決定的な成功要因となったということである。デジタル家電製品アーキテクチャーが示唆する水平分業型ビジネスモデルとは対照的に,開発過程に関して本研究が示したものは,製品部門のシステム知識と半導体部門の設計・プロセス知識の融合,さらにはそれら各製品領域ごとの知識創造を製品間にまたがる統合知識(プラットフォームの開発)へ集約することを容易にする統合型組織活動の有効性である。
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