18年度は、前年度に引き続き、P.ウルリッヒ(スイスのザンクト・ガレン大学)の統合的な経済倫理および企業倫理についての方法論的および理論的考察を中心に行った。彼の経済倫理学は独自の哲学的構想に立つものであることから、その理解には予想外の時間と労力を要した。しかし、18年度においては、前年度からの研究の蓄積を別記の3本の論文として発表することができた。(ただし、最後のものは目下印刷中であり、公刊は19年度になる可能性がある。)なお、ウルリッヒの企業倫理学については、目下、別の論文として執筆中であり、ほぼ完成の段階にある。これによって、ウルリッヒの経済倫理学および企業倫理学についての考察は一応の完結を見ることとなる。これと並行して、ドイツ語圏の企業倫理学のいまひとりの代表的研究者であり、ウルリッヒと対照的な見解を主張しているK.ホーマン(ミュンヘン大学)の経済主義的な経済倫理学および企業倫理学についての研究にも既に着手している。 なお、その一方で、ドイツ語圏のみならず、アメリカおよびわが国の企業倫理学、企業倫理の実践および現実の企業の不祥事に関する文献や資料の収集にも努めた。さらに、現在、多くの研究者によって精力的に展開されている企業支配、企業統治や「企業の社会的責任(CSR)」と企業倫理との異同が極めて曖昧であることから、それらの関連について整理し、「企業と社会」あるいは「企業と利害関係集団」についての総合的かっ体系的な研究を行うことの必要性と重要性を痛感している。それ故、それらについての文献や資料を集め、それについての考察にもカを注いだ。今年度は、個人的な事情のために海外出張を断念せざるをえなくなったため、その分の研究補助金を匡内の諸機関でのそうした文献・資料の収集や書物の購入に当てることができた。
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