研究概要 |
本研究の第1の課題である「チャネルの間での数量-価格競争」については、7編の論文を作成した。主要な結論は、以下の通りである。生産者間では価格競争が行われているが、小売業者の間では数量競争が行われている状況では、仮に生産者が小売業者からフランチャイズ料を徴収可能ならば、需要の増加は出荷価格の下落を導くし、出荷価格は戦略的に代替的となる(このことは、生産者数や小売業者数には依存しない)。また,たとえ生産者数が少なくても、小売業者数が多ければ,小売価格は限界生産費用に近似するという意味で市場は競争的である(この点については、実証的にも検討した)。さらに、生産者による小売業者の分離は,フランチャイズ料を徴収可能ならばチャネル間の競争を激しくするし,フランチャイズ料を徴収不可能な場合にはチャネル間競争を緩和する。 次に、需要不確実性下で複合チャネルの戦略的分離について検討した。 主要な結論は、仮にフランチャイズ料を徴収可能ならば両生産者がフランチャイズ料を徴収して小売業者を分離するが唯一の均衡になるというものである。また、フランチャイズ料を徴収できない状況で財がある程度同質的な場合には、両生産者が統合している状況と両生産者が分離してる状況の2つが均衡となる。この点と関連して、1990年代中盤以降の家電業界における建値製からオープン価格製への移行や再販制規制について検討した。 さらにテリトリー制の導入が無駄な輸送を排除することによって、パレートの意味での改善となることを示した最後に販売会社の分社化が生産者の費用削減投資への誘因を強化することを示した。 第2の課題である「卸・小売システム」については第2編の論文を作成した。卸については「流通の各段階で発生する情報伝達が制約を受けるため、情報を獲得した主体が情報を利益に転換するために流通に介入する結果、流通経路が長くなる」という仮説を1970年代以降30年間のパネルデータを用いて実証的に検討した。また、小売りについては、米国の1982-2002年のパネルデータを用いて、小売店舗密度の規定因を実証的に検討した。
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