研究課題
現在、航空旅客輸送サービスは、大規模な路線網を持つ大手航空会社と、ポイント・トゥ・ポイントおよびノー・フリルサービスに徹する低費用航空会社(LCC)の二極化が進んでいる。LCCは路線網の規模では大手に及ばず、したがって多くの路線から収入を得る機会が限られる。しかしLCCが新たな路線網の整備には設備投資が必要であるため、路線網拡張の機会を見送り、あくまで費用を逓減させることで利益を得ている。このようなLCCが、小額の設備投資で路線網を拡張する機会があるとすれば、LCC同士のアライアンスである。LCCが低い費用水準を維持したままアライアンスによる路線網拡張が達成されれば、独占的な大手航空会社に拮抗する有力な競争相手となる。本年度はまず米国のLCCによる単独参入が市場価格と輸送量、及び消費者余剰にどのような影響を与えるかを計測し、さらにその効果が航空会社のタイプ別にどの程度持続するのかを計量経済的手法を用いて計測した。そして、おのおの研究成果を日本語論文として公刊した。内容はLCCの参入は、市場価格を引き下げると共に輸送量を増大させ、消費者余剰を増加させること、その効果は大手との同一空港における直接的競争のほうが、近隣空港への参入よりも効果が大きいこと、またサウスウエスト航空の参入によるプラスの経済効果は長期間持続するのに対し、それ以外の航空会社のプラスの参入効果は2〜3年で終息し、やがてマイナスの経済効果に転じることが明らかとなった。その一方で、大手航空会社に拮抗するLCCのアライアンスによる経済効果に関して経済理論的モデルを構築し、神戸大学経営学研究科英文ディスカッションペーパーとして公刊している。内容は、大手航空会社に対するLCCの強みは「無駄なサービス」を廃止したという意味での垂直的製品差別化、低費用性、及び輸送密度の経済性であることに着目し、これら3つのパラメーターがどのような範囲の値をとればLCCアライアンスがプラスの国民経済的効果を持つのかを明らかにしている。現在海外査読雑誌への投稿を準備している。またこれらの研究成果内容を普及させるため、主編者として教科書を執筆し、公刊している。
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運輸と経済 65-5
ページ: 53-61
国民経済雑誌 191-4
ページ: 85-95
Discussion Paper Series, Graduate School of Business Administration (Kobe University) 2005-37
ページ: 1-21