日本の小売企業は、チェーン化や大規模化にともなって、一様化、均質化、そして標準化が進んでいると一見見受けられるがはたしてそうであろうか。外見上や形式上はそう捉えられるかもしれないが、日本の消費者の地域的特質の違いは依然として大きいのではないか、ということがわれわれの基本的な見解である。この観点に立ち、われわれは、沖縄地区の小売業と九州各地の小売業の資料、文献等を調べ、観察調査を行った。 その結果、沖縄地区では、食料品を中心に地域の文化、伝統、習慣、風習にちなんだものが、そのときどきで販売されていることや店員と顧客との人的関係が強く対話なども多いといえる。一方、九州地区では地域ごとの違いはあるものの、やはり食料品を中心に九州地域の文化、伝統、習慣、風習にちなんだ独自の商品アイテムが各小売店で販売されていて、店員と顧客との人的関係は弱く、個人的な対話もさほど多くない。上記の点に限らず、沖縄地区と九州地区の小売企業とでは地域で異なる戦略展開がみられ、小売企業は地域ごとに異なり、地域に適応しながら存在していると考えることができる。 また、日系小売企業の海外進出動向では、アジア地域でこそある程度みられるものの、欧州方面では低調にとどまっている。従業員の雇用や管理等の問題はあるものの、日本の小売企業の地域適応力を駆使すれば各国での成功が可能と考えられる。すなわち、日本の小売企業のグローバリゼーションのためにはローカリゼーションが必要で、日本小売企業は地域適応能力が高いことから日本の小売企業の海外市場での成功の可能性は大いに期待できる。グローバリゼーションとローカリゼーションは対立する概念でなく共生する概念と位置づけられ、特に小売業に限ってはグローバリゼーションを推し進めるには、ローカリゼーションが重要であり、それをいかにそれぞれの消費者の地域的特質にあわせるかが鍵となると考えられた。
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