日本の広告取引構造システムを考える際に日米広告の内容の違いを把握する。 2005年に報告された公正取引委員会の広告業界分析は、欧米型広告業をモデルとする観点による傾向があった。そこで、日本における取引問題をめぐる論点を広告会社および広告関連団体を対象に聞き取り調査を行った。その結果の要約は以下のようである。 広告主団体の基本的主張は、(1)透明性の観点でフィー制度がコミッション制度に勝っているという立場である。また、個別広告主の社内事情を明らかにした。公正取引委員会の基本的主張である欧米型広告業モデルに対して、日本の広告の商習慣が米国に通用しない理由を明らかにした。その理由には、米国広告会社の法的立場や日本の広告会社の独特のビジネスモデルが挙げられた。米国の広告会社が広告主の代理人(代理店)という立場を取るのに対し、日本の広告会社は、(1)広告主の代理人、(2)媒体社の営業代行、(3)自己商人の3つの側面を持っている。この立場は世界でも類を見ない広告会社の形態である。そのため、欧米型広告ビジネス商習慣を日本に導入することが困難である。また、欧米型広告取引制度の日本導入の問題点に際しては職務範囲の規定と進行の難しさがある。欧米流に「サービスの切り売り」を行うと広告主にとって統合マーケティングIMCの難しさが派生する。 広告主の主張する論点は、フィーへの移行による透明性確保というよりもむしろアカウンタビリティ(説明責任)の要求である。また、広告主側が求める原価開示については現状では広告業者団体に統一見解は無い。各広告会社には唯一絶対の報酬制度は存在しない。広告主ごとに各社各様の付き合い方を行っている。 全体的、総合的に広告主の事業活動に参画できなくなると、広告業務の魅力が薄れ、業界の人材の質低下と流出問題が起こり、今日の米国広告会社の人気衰退の原因ともなる。以上
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