本年度の研究は松下電器産業と東芝のアメリ市場を中心としたグローバル・マーケティングの特徴について解明した。グローバル・マーケティングに先行する輸出マーケティングやマルチナショナル・マーケティングは「雁行型発展」と呼ばれ、国際マーケティングの発展が先進国から発展途上国へと順次段階的な発展形態をとるのに対して、グローバル・マーケティングは、「世界同時発売」をすることによって先行し、他社が追随し商品がコモデティ化し価格が下落する前に、収益を上げる戦略を主たる内容とする。 松下電器産業の世界同時発売は、新製品を世界同時に発売し、短期間で高いシェアを獲得し、一気に売り切るという戦略である。2005年5月に、プラズマテレビ「ビエラ」で日米欧の3極同時発売を実施し大きな成果をあげた。プラズマテレビでいえば、世界シェア3割を超えるアメリカ市場はとりわけ重要である。ここでは全世界の家電メーカーがしのぎを削っており、製品開発でも販売でもスピード求められている。そのため松下電器のアメリカ子会社パナソニック・ノースアメリカ(PNA)は、日々のモノ作りのスピードを速めるSCM(サプライチェーン・マネジメント)の強化に力を入れ、現地の巨大量販店であるベスト・バイやサーキット・シティとの結びつきを強めている。 東芝アメリカ・コンシューマ・プロダクツ(TACP)は、デジタル技術を核とした次世代映像機器を前面に打ち出し、アメリカ市場での優位を確立しようとしている。東芝アメリカは得意とするプロジェクション・テレビやDVDレコードを中心に、アメリカ市場で絶対的な優位を確立するため、ベスト・バイやシアーズとの結びつきを強めている。そのためには大型店の定番商品の獲得に力を入れている。
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