本年度の研究では薄型テレビやDVD製品などの技術革新の速いデジタル情報家電製品における「垂直立ち上げ」と「世界同時発売」を特徴とするパナソニックを中心とするグローバル・マーケティング戦略について分析した。「垂直立ち上げ」とは、新製品の発売から短期間に一気にフル生産に持って行き大量生産・大量販売を立ち上げ、大きな市場を獲得することである。「世界同時発売」とは、新製品を複数の国で世界同時に、垂直的に立ち上げ発売し、短期間で高いシエアを獲得し、一気に売り切る戦略である。この戦略は従来の新製品をまず国内市場で開発・販売し、ついで海外市場で生産、販売へと順次展開しいく「プロダクトライフサイクル戦略や「雁行理論」とは異なり、これまでどの企業も試みてこなかった画期的な戦略である。 このパナソニックが実践した戦略を成功させるためには、次のような条件が必要であった。(1)販売店からの週次単位での注文に応じることができる工場側での供給体制が整備されていなければならなかった。とりわけ、リードタイムの短縮に応じることのできるIT技術を中心とするフレキシブルな供給体制が必要であった。(2)もう一つの条件は流通、とりわけ大手量販店との継続的な協力体制の構築であった。週単位の商品納入を可能とする製販統合のサプライ・チェーン・マネジメントの構築であった。 分析の対象としたのは、アメリカ・日本を中心としたヨーロッパを含む先進国での実態であった。しかし、パナソニックをはじめソニー、東芝、シャープは、グローバル・マーケティング戦略の展開にさいして、BRICsを中心とした新興国市場に活路を求めている。そこで、本年度はベトナムにおけるパナソニック、東芝のグローバル・マーケティング戦略の実態調査を行い、資料収集を実施した。
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