本年度は、主に歴史制度分析アプローチに基づき、会計制度を対象とするミクロ的研究を行った。本年度の研究成果はおおよそ次の通りである。 (1)リース会計基準は、もともとディスクロージャーの充実や国際的調和の観点から設定されたものであり、内容的には「実質優先思考」を概念的柱とし、「割引現在価値」を技術的柱とするものである。これらの特徴は、会計ビッグバンの基底をなすものである。「伝統的アプローチ」、「現行アプローチ」および「ニューモデル」について比較検討した。リース会計基準は、経済的影響に目を向けるとたしかにBig Bang(宇宙開闢時の大爆発の意)に相当するが、現行アプローチのもとではいまだ法的、制度的用件が機能しており、理論的には必ずしもパラダイムが転換したとはいえないことが明らかにされた。しかし、ニューモデルに移行することになれば、理論的にも著しい変化がみられるであろうことを指摘した。 (2)会計ビッグバンの影響を、企業会計と非営利組織体(NPO)の会計について比較検討した。もともと企業会計は、特定の期間内にどれだけの利益をあげたのか計算し、これを投資家、債権者等に開示することを主眼とするものであって、分配(配当など)の基礎を与えるものである。他方、NPO会計は、受託財産ないし受託資金のフローに関する会計責任を明らかにすることを主眼とするものであって、基本的に財産の分配はできないとされてきた。しかし、近年(とくに会計ビッグバン以降)は、株式会社とNPOの活動領域がオーバーラップするようになり、また脱会等を擬制した実質的な配当がなされることもあり、さらには非営利性を特徴とするNPOにも効率性が強く求められるようになってきた。さらに調査する必要があるが、いわゆる資源会計の動向などをみる限り、会計ビッグバンの影響がNPO会計にまで及んでいる可能性を指摘することができる。
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