今年度の研究活動としては、公会計改革に関する先進的な取り組みをしている地方公共団体への訪問調査とインターネットを活用した公会計に関する実務資料の収集を行った。 訪問調査は、8月に、大分県臼杵市、札幌市、および埼玉県草加市に出向いて公会計改革の実務担当者に対するインタビュー調査の形式で実施した。臼杵市での調査では、全国の市町村に先駆けてバランスシートの作成を実施し、その後も独自方式と総務省方式の両方式で作成した財務諸表の公開を継続していることについて、作成に至った経緯と実務上の課題に関する実務担当者の見解を聴取した。また、野津町との合併による新臼杵市に関する開始バランスシートの作成に関する資料を収集した。札幌市の調査では、臼杵市と同様に独自方式でのバランスシートの作成を実施するに至った事情を当時および現在の実務担当者から聴取した。またインターネット上で公開している札幌市の財務報告書の課題に関して意見交換を行った。そして草加市での調査では、同市が「ローリング予算制度」の特区申請を行っていたことを受けて、同市で進められている財務会計制度の改革の状況について特命理事を含めた実務担当者の意見を聴取した。また同市の行政評価システムに関する詳細な資料を入手した。そしてこれらの実地調査の結果は、研究論文(「地方公共団体における会計改革の現状と課題」、『龍谷大学経営学論集』第45巻3号、pp.126-138、2005年)として公表した。 インターネットを活用した実務資料の収集に関しては、主として地方公共団体の議会議事録を中心に、予算審議の中でのバランスシート等の取り扱いの実情を調査した。また、インターネット上で行政評価の結果を公開している地方公共団体を中心に、行政評価とバランスシート等との結びつきを示す資料を収集した。
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