今年度の研究活動としては、前年度に引き続き、先進的な取り組みを実施している地方公共団体への訪問調査と、地方財政改革に関する文献研究を進めた。 訪問調査は、7月および8月に、熊本市、青森市、および鳥取市に出向いて、各市の財政・会計担当者に対するインタビュー調査の形式で実施した。熊本市においては、同市財政課が中心となって実施している住民向け財政説明会でのバランスシート等の活用状況についての説明を受け、決算数値を用いた説明責任の履行に関する担当者の見解を聴取した。また青森市においては、同市に設置された自治体経営局の担当者と面談し、同市が構築を進めている「自治体経営システム」の内容に関する資料を収集するとともに、同市の財政運営における決算資料の活用状況に関する担当者の見解を聴取した。さらに鳥取市においては、平成14年に公表された「鳥取県東部地域における市町村合併に係る研究会報告書」の作成担当者と面談し、市町村合併に関する検討作業で決算数値やバランスシート等の決算書類を利用することのメリットに関する説明を受けるとともに、鳥取市における合併が実現されるうえで上記の研究会報告書が果たした役割に関する担当者の見解を聴取した。これらの訪問調査を通じて、地方公共団体における財務会計・報告制度の方向性に関する有意義な情報を多数収集することができた。 前年度からの実地調査および文献調査の成果については、日本簿記学会関東部会で研究発表(「地方公共団体における複式簿記の利用とその課題」、会場校:日本大学、2006年6月)を行うとともに、研究論文(「地方公共団体における財務会計制度改革」『地方自治』第706号、pp.2-15、2006年9月)として発表した。
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