マレーシアの研究協力者と共に、日本とマレーシアにおけるストック・オプションの歴史・会計・税務について、両国を比較しながら研究を行った。ストック・オプションの付与に伴って費用計上が求められるようになったことの影響は小さくなく、日本においてもマレーシアにおいてもストック・オプションの付与することに対して、企業は慎重になっている様子が明らかになった。特に日本の場合、通常のストック・オプションとは異なり、利益処分として現金で支給されたきた役員の退職慰労金を、事実上の譲渡制限株式で代替するための手段として、行使価格を1円とし、退職時に行使可能となるストック・オプションが用いられるようになってきている。ストック・オプションの普及には税務上の優遇措置が重要であり、アメリカにおけるストック・オプションが1950年代の初頭に普及した理由も、税務上の優遇措置の導入が契機となったと説明されてきた。しかし、ストック・オプションであれば、費用計上なしに報酬を支払うことができるという点も、その報酬制度を維持する上では重要であることが明らかになった。以上のような研究成果について、アジア太平洋国際会計研究集会において研究報告を行った。 また、わが国のストック・オプション会計基準について、国際的な会計基準との重要な相違と、損益計算の新しい枠組みについて検討を行った。
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