本研究の目的は、企業の法的組織構造とくに資本構成と法的組織形態の選択の選択に対する税制の影響を解明することにあり、とくに本年度はわが国の各種事業体に対する会社法制と課税制度の特徴を明らかにすることを目的とし、(1)わが国の各種事業体の法的組織形態の特徴を明らかにし、(2)事業体課税に関する資料を収集し、(3)諸外国における事業体課税制度に関する資料を収集・分析するという実施計画に従って計画を進めた。 わが国の各種事業体の法的組織形態および事業体課税については、とくに昨年から導入された有限責任事業組合(日本版LLP)および本年から施行される会社法において新たに創設された合同会社(日本版LLC)に焦点を合わせて、その法的組織形態と課税上の特徴を分析するとともに、これらの組織形態の活用方法についても調査した。その結果、リスクが制限されかつパススルー課税の行われる有限責任事業組合は、研究開発や投資事業体等として有効活用の可能性があることがわかった。また、パススルー課税の行われない合同会社も有限責任事業組合よりも取引コストを低くでき、かつ利益分配方法を工夫することによって重複課税の不利性を回避できる可能性があることもわかった。ただし、この重複課税の不利性回避の可能性は、同族会社の留保金課税制度の運用の影響を大きく受けるため、今後の同制度の整備が重要である。 さらに、法的組織形態選択にとって非常に重要な要因となる会社の資本および剰余金分配の会計と税務に関する会社法の新規定の特徴と問題、そして税務上の影響についても調査した。この結果、会社法下で資本の計数と剰余金の分配が柔軟になったことから、会社形態の個人事業形態に対する有利性が益々上昇する反面、租税回避の可能性も拡大したことから、この側面に対する税制の整備が今後重要になることも明らかにした。
|