平成18年度における研究実績は以下の通りである。 1 新たに平成18年において会社法の施行に伴って創設された合同会社(日本版LLC)制度および信託法等の改正に伴う新たな信託形態等の制度的特徴とこれらの事業体に対する税制の内容を調査した。 2 1の調査結果を受けて、これらのほかに既にわが国において導入済みの有限責任組合(日本版LLP)を含む各種事業体における出資者の責任、取引コストおよび税コストを比較した。 3 2と並行して、アメリカおよびオーストラリアにおける事業体課税制度を調査した。 4 実務家、研究者および学生の参加したThe 3rd Annual Guam International Accounting Forum 2006において、Tax Accounting in Japan : Corporate and Partnership Taxationというテーマで、わが国における事業体課税の特徴について報告し、アメリカにおける同種制度との異同について討論した。 以上の経過から得られた現段階における暫定的知見としては、わが国における事業体の多様性はアメリカやオーストラリアにおける同様の制度に接近しつつあり、わが国産業の国際競争力強化という観点からは評価できること、合同会社には有限責任組合や特定目的会社に比べて特に有意なベネフィットがみられないこと、同族会社の留保金課税負担の軽減と株式譲渡所得課税負担の軽減は、有限責任組合や特定目的会社のようなパス・スルー事業体の株式会社に対する税務上の有利性を低下させること、新たな信託制度には課税上の不明点が多いため税制上の整備が必要であること、等が挙げられる。なお、これらの知見のまとめを論文として現在、執筆中である。
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