研究課題
基盤研究(C)
2005年の会社法や有限責任事業組合契約に関する法律の制定、および2006年の信託法の改正によって、現在、わが国において事業体として採用できる法的組織形態には、個人事業のほか、組合形態をとるものとして民法上の任意組合、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合、商法上の匿名組合が、会社形態をとるものとして持分会社である合名会社、合資会社および合同会社のほか、株式会社、特定目的会社および投資法人が、信託形態をとるものとして受益者課税信託、集団投資信託等および法人課税信託がある。これらの多種多様の法的組織形態のうちどの形態が税引後キャッシュフローを最大にするかは、各形態の税コストと税以外のコストに依存する。税コストは、事業体段階での課税の有無および構成員段階での課税時期と所得の種類に依存する。税以外のコストとしては、法人格の有無による取引コストや構成員の責任の限度などが影響する。本研究では、上記の各法的組織形態の特徴を明らかにし、とくに税コストの側面から、各種形態を、所得発生時発生時構成員課税形態、分配利益損金算入形態、分配時構成員課税形態および法人課税形態に分類し、法的組織形態選択モデルを適用して、各形態の税務上の有利性を比較した。分析の結果、現行の税率体系の下では、2段階課税が生じない構成員課税形態が必ずしも税務上有利とはいえないことが明らかになった。具体的には、配当利回りが1%のとき投資期間が30年を超えると法人課税形態の方が構成員課税形態よりも有利になる。また、分配利益が事業体で損金算入される形態では、必ずしも利益の全額分配が有利とはいえず、たとえば配当利回りが1%のとき投資期間が5年を超えると、分配利益損金算入形態が構成員課税形態および法人課税形態よりも有利であることがわかった。
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商経学叢 第55巻第1号(印刷中)
Journal of Business and Economics Vol. 55, No. 1