平成17年度は、まず意思決定・有用性アプローチの観点から形成されている、日米の概念フレームワークを検討した。その結果、日米の概念フレームワークは、類似している点もあるが、日本独自の基礎概念もあることが明らかになった。また平成17年度は、古典的・真実利益アプローチと意思決定・有用性アプローチの論理的特徴を解明するため、米国における1930〜1960年代までの重要文献を再検討した。ここでは、特に古典的・真実利益アプローチを採用しても、利益観としては収益費用中心観のみならず、資産負債中心観も内包していたことを明らかにしている。 平成18年度は、ひきつづき米国における1960年代の重要文献、すなわちエドワーズ・ベルの会計理論を再検討した。さらに概念フレームワークと会計基準の論理的整合性の問題が検討された。ここでは、FASB、IASBおよび日本のストック・オプションの会計基準と概念フレームワークの関係は、論理的な整合性があるとしながらも、ストック・オプションの会計基準に関して、FASBとIASBはほぼ同一の内容であるが、日本の会計基準はこれらと大きく異なっていることを指摘した。つまり、FASBとIASBは、ストック・オプションを資本と規定しているのに対し、日本は、それを純資産の部における株主資本以外の項目と規定しているのである。ここでわが国は、IASBが主張する会計基準の世界統合の流れを部分的に受入れていない。したがって、今後、わが国の会計基準設定の方向性は、会計基準の世界統合の流れを受容しながらも、場合によっては日本独自の会計基準を設定し、会計基準の「相互承認」を目指す場合もでてくるものと推察される。しかし、この「相互承認」が可能か否かは、今後の大きな課題であろう。
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