本研究は企業情報の開示品質の改善について考察した。ポイントは(1)日本企業の情報開示の現状と諸外国のそれを比較し、日本企業の改善余地を整理すること、(2)諸外国における開示情報の品質改善に向けた取組みを整理すること、(3)わが国企業の情報開示の品質評価方法を検討することである。 まず情報開示のIT化により、どのような改善が可能で、またコーポレート・ガバナンスにいかなるインパクトを与え得るかを考察し、双方向型コミュニケーションの進展と情報発信者・受信者間の同期化が可能となることを明らかにした。また、諸外国の先進事例として、無形資産の開示、プロフォーマ情報の開示、管理会計情報の財務報告への活用を指摘した。前者2つは情報の信頼性という面で問題が指されうるが、証券市場に対して有用な情報を提供しているとの証拠が示されている。ただし、プロフォーマ情報は、日本企業ではそれほど浸透しておらず、この点はわが国企業の情報開示の特質といえる。 財務情報のみの情報開示では企業活動を十分に伝達することは難しく、定性情報を付加することが財務情報の有用性を高めることにつながる。日本企業の定性情報としては環境報告書、CSR報告書等が特徴的であるが、どのような定性情報が企業の情報開示の品質改善に資するかは企業のおかれている事業境に依存する。一般的に、製造業は金融業よりも環境関連情報を積極的に開示している。自社のおかれている事業環境の中で、財務情報と定性情報をミックスし、これを適時に公表することが情報開示の品質を左右するといえる。そのためには、自社の情報開示政策を規定する開示方針を確立し、そのもとでPDCAを展開してくことが持続的な品質改善に不可欠といえる。
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