本研究では、知的資産のいくつかの事例を取り上げながら、知的資産の測定可能性を探り、その中心となるブランド価値評価の問題を論じてきた。そのうえで、知的資産会計の戦略的な活用と評価、および開示のための新たな企業価値評価のバランス・シート(モデル)を提唱した。 ここで提唱したモデルは、戦略的に有効で実行可能かつ開示を視野に入れたものになるよう意図したものとなっている。そして、企業全体の知的資産価値に必要な情報を提供するために、投資的価値など5つのディメンションの価値を導入して評価できるような指標を開発した。さらにここでは、評価者がその重要なバリュー・ドライバーをモニターするために、戦略的な視点に立って生産効率、顧客満足度など事業価値に影響する評価指標を採用する必要があることを示した。 われわれの試みは、単に財務的指標に頼るのではなく、非財務的な要素をも加え、それを企業の価値評価の対象として戦略的判断に活かすことである。今後、産業の国際競争力が激化する中にあって、知的財産を資産として活用するための必要性はますます高まることが期待できる。 知的資産の価値評価モデルの先進的な事例に対しては国内の企業や研究機関を訪ねて現地調査を実施した。 当該研究ではそれらの成果を踏まえて、さらに進んだ「知的資産の価値評価モデル」、および新しい「財務報告システム」の問題を検討してきた。急速に進化しつつある最新の理論の成果を踏まえ、さらに知的資産の価値評価と知的資産のオンバランス化の理論構築を行い、論文にまとめた。こうして、理論的基礎をつくり、実証のための仮説を立て、新しいモデルを構築するための一連の準備をすることができた。
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