研究概要 |
本研究では連結利益情報のもつ企業価値の説明力が会計制度の大変革(会計ビッグバン)によりなぜ高まらなかったのかという疑問を解明しようとしている。会計ビッグバン直後は法人税を控除した連結当期利益は、税引前利益である連結経常利益より株価の説明力が弱いことが実証的に明らかにされた(山形・國村[2003],山形・三澤・國村[2005])。日本の会計ビッグバン政策は、会計基準の国際的共通化のうねりの中で、漸進的な改革を指向してきた。事実、連結会計(2000.3)、税効果会計(2000.3)、退職給付会計(2001.3)、金融商品の時価会計(2001.3)、固定資産の減損会計(2006.3)と徐々に改革が進められてきた。この事実を踏まえるとき、ひとつは、会計基準の国際的共通化のうねりのなかに日本の会計ビッグバン政策を適切に位置づけることが実証分析の前提として欠かせないということである。2つ目は,連結会計と税効果会計のみで会計ビッグバンを評価するのは不十分であり、その後の退職給付会計、金融商品会計、減損会計の導入を分析対象に追加することが不可欠である。本研究では、これら個々の会計基準の導入による効果を年度ごとに段階的に評価するという新たな分析を試みたい。つまり、研究の主要な目的は会計ビッグバン政策を会計基準導入年度別に評価することである。現在、研究の拡張による拡張データベースの作成がスムーズに進みつつあり、これを基にした拡張パイロットテストが繰り返されている。
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