当期利益情報のもつ企業価値の説明力が会計制度の大変革(会計ビッグバン)によりなぜ高まらなかったのかという疑問を解明することを本研究の目的とする。 会計ビッグバン直後は法人税を控除した連結当期利益は、税引前利益である連結経常利益より株価の説明力が弱いことを実証的に明らかにし、雑誌『会計』に成果を公表した。これを受けて、連結決算への移行前後を比較し、連結移行後、連結利益情報の株価への影響が強まった事実を確認し、特に特別損益控除前の「コア利益」の株価関連性が高いことが明らかにされ、会計研究学会で発表し、雑誌『会計』に成果を公表した。 次に退職給付会計、金融資産の時価評価会計、減損会計などが相次いで導入された事実をとらえ、果たして、連結当期利益の説明力は、新基準の導入のたびに徐々に高まってきたであろうかと問い、これを検証した。しかし、毎年のように導入される新基準を別べつに評価することはきわめて困難であったため、歴史的経緯を『名城大学総合研究所紀要』に公表するにとどめた。 そこで本研究では、分析を追加した。利益操作(報告利益管理)に着目し、損益ゼロの近傍での利益の歪みを検証した。分析の結果、会計ビッグバンの前には確認されなかった利益分布の歪みが会計ビッグバン後に明瞭に確認された。この事実を論文にまとめ『同紀要』に公表した。
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