本研究「主観的会計情報の監査に関する事例研究」は、近年企業の財務諸表において増大してきた主観的会計情報のうち、いくつかの会計上の見積り(例、環境債務、年金債務、金融商品など)に対して、監査人がいかに対応してきたかを、3年間の期間にわたり検討し、特に、その問題点を、アメリカにおける証券取引委員会による監査上の処分事例の研究を通じて明らかにしようというものである。 平成17年度は、まず事前準備を行った。これまで収集したいくつかの文献やSEC処分事例に関してすでに検討されている論考をもう一度調査し、とくに会計連続通牒(Accounting Series Releases)第200号のリーシング社の事例および会計・監査執行通牒(Accounting and Auditing Enforcement Releases)第109A号のサージカル社の事例など会計上の見積りが問題となった5つの事例について翻訳を行い、その構図を整理し分析のためのフレームワークの構築を試みた。現在のところ、問題となった主観的会計情報固有の性格、会計情報作成者の内部統制の問題を類型化して、それに対して監査人の問題をとりあげて議論する必要性を強く認識させられた。そこでこれらの類型化をより具体的に整理するため、平成17年12月に、イリノイ大学アーバナー・シャンペーン校を訪問しデータベース等を利用して、特定の会計上の見積りである工事進行基準に関する事例を収集した。現在その内容の検討を行い、次年度の成果の公表にむけて論文を作成中である。
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