本研究「主観的会計情報の監査に関する事例研究」は、近年企業の財務諸表において増大してきた主観的会計情報のうち、いくつかの会計上の見積り(例、環境債務、年金債務、金融商品など)に対して、監査人がいかに対応してきたかを、3年間の期間にわたり検討し、特に、その問題点を、アメリカにおける証券取引委員会による監査上の処分事例の研究を通じて明らかにしようというものである。 最終年度にわたる平成19年度は、まずは主観的会計情報の監査の代表である会計上の見積りについて、国際会計士連盟の国際監査・保証基準審議会によって2006年12月に公表された公開草案を総合的に検討した結果を論文として発表し、また学会で報告した。さらに、過去数年にわたって検討してきた監査上の処分事例について、その検討結果を学会で報告し、その際の質問や助言を加えてその結果を論文にまとめた。 本研究は、最終的には多数の事例の中から抽出した11件の事例について、その内容を主観的会計情報の性格と監査人の行動から分析し、とりわけ主観的会計情報の監査における失敗がどのように生じたかに焦点に合わせてその内容を図式化した。これらの研究の結果、主観的情報の監査において、(1)監査手続の適用の失敗、(2)証拠の入手・評価の失敗、(3)見積りの評価とその後の対応の失敗、(4)監査人の経験や知識の欠如と(5)会計上の見積りの変更への対応の失敗といった課題が存在することが確認され、また今後の研究における課題が明確になった。
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