研究概要 |
「複式簿記とは何か」、この問題を解決しうる道を追い求めて、イタリア簿記が導入される「ドイツ簿記の16世紀後半」、それも、複式簿記の歴史の裏付けを得ながら、その論理を今日的な視点から解明した。具体的には、(1)「帳簿記録」について、どのように記録されたのか、翻って、そのように記録されたのはなぜか、(2)「帳簿締切」について、どのように締切られのたか、翻って、そのように締切られたのはなぜか、この問題に焦点を絞って、平成17年度には、まずは、1.研究の目的、2.イタリア簿記の導入-Schweicker, W.の印刷本、1549年-から解明した。イタリア簿記の原型1となるPacioli, L.の印刷本との異動を比較、分析することから開始して、ドイツに初めて「残高勘定」が開設されること、貸借平均原理が保証されるように、「残高勘定」が検証機能と繰越機能を果たすことを解明した。研究の成果は、拙著『複式簿記の歴史と論理』の第4章と第5章に公表している。 これに引き続いて、平成18年度には、3.イタリア簿記の再生-Gamersfelder, S.の印刷本、1570年-を解明すべきではあったが、まずは、5.イタリア簿記の発展-Gossens, P.の印刷本、1594年-から解明した。ドイツに初めて「締切残高勘定」と「開始残高勘定」が開設されるからである。貸借平均原理が保証されるように、間違いなく記録されたか、間違いなく締切られたかを検証するのが「締切残高勘定」であること、新しい帳簿に間違いなく繰越されたかを検証するのが「開始残高勘定」であることを解明した。研究の成果は、拙稿「ドイツにおけるイタリア簿記の発展」に公表している。さらに、4.イタリア簿記の展開-Sartorium, W.の印刷本、1592年-も解明した。ドイツで初めて残高勘定の「残高」という表現が使用されるからである。加えて、16世紀の「大航海時代」に独特の交易形態、航海の運と不運を賭しての「冒険(射幸)売買勘定」と、先駆的な損害保険としての「冒険貸借勘定」(「運不運勘定」)が開設されるからでもある。研究の成果は、拙稿「ドイツにおけるイタリア簿記の展開」に公表している。 なお、3.イタリア簿記の再生-Gamersfelder, S.の印刷本、1570年-と、6.研究の総括については、目下、まとめて執筆中である。
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