公的部門の会計改革過程を政策科学的に把握するため、改革の背景になった社会・政治・経済環境及び主要なアクターの相互作用について既往文献及び実態調査を実施した。その際、会計改革は単独に行われるのでなく、ガバナンスの見直しや公的部門の改革推進の見地から一つの政策価値実現手段として実施されるとの仮説から、各国の公的部門の会計改革を他の改革との進捗や背後の理論との関係において整理した。 その結果、最も理論的に整合的な体系で実施しているのはニュージーランドであり、公共選択やプリンシパル・エージェント理論に適合する体系となるように会計基準が設計されているといえる。他方、米国や英国及びわが国での公会計改革は、必ずしも予め理論が準備され、それと整合的な会計基準とはなっていない。この状況の差は、会計改革の行政改革での位置づけがアカウンタビリティの向上に力点を置くか効率性などの経営改善に力点をおくかによって規定されると考えられる。つまり、ニュージーランドは後者、米国や英国及びわが国などは前者となる。 また、意思決定者である議員の公会計改革への認識や意識について、わが国の国会議員に関してアンケート調査を実施して分析した。その結果、多くの議員は公会計改革を広い意味での経営改善に期待していることが明らかになった。なお、各国の実態調査のうち既往研究が豊富であり実態把握が容易な米国と英国については学術文献やインタネットなどの公開情報の調査を先行させることとし、ニュージーランドにおける改革、特に会計基準に係る主要なアクターである基準設定機関、財務省、会計士協会及び学者からヒアリングを実施した。その結果、公会計に特有な現金主義から発生主義会計への移行への抵抗感や反対意見は理論及び実践面でほとんどなく、論点は公会計の特有な会計処理におかれ、改革への用具としての貢献に各アクターの関心がむかったことが判明した。
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