研究課題
本年度は研究の最終年度であることから、これまで国際比較研究を行ってきた各国の改革過程を統一的なモデルで分析し、何が改革を推進しているか、誰がその主導的役割を果たしているか、国際的な調和化の圧力の影響はどの程度か、会計制度以の改革とどのような関係があるか、とりわけ企業会計の動向とどのような関連を有するかに焦点をおい検討てした。その結果、Public Interestの価値を公的部門の会計で重視するアングロサクソン諸国とRechtsstaatの価値を重視する欧州大陸諸国で大きく改革のアクターび企業会計との関係性が異なることが明らかにされた。具体的にいえば、前者では会計専門職による企業会計との統一性び基準設定過程の中立性・独立性が重視される一方、後者では公法としての会計基準の設定が制度化において要求され基準設定においても議会・行政の関与が強いということである。もちろん、アングロサクソン諸国でも英国は米国よりも企業会計との共通化の色彩が強く、国際公会計基準(IPSAS)でなく国際財務報告基準(IFRS)を適用することに方向転換するなど各国で調和化の程度は異なる。同様に、欧州大陸諸国でも予算基本法等の公法の改正によって企業会計化を推進しようとする点では共通しているが、実際の運用では会計専門職の層の違いや伝統的な現金主義統制を保持したい意向から決算段階での追加情報的な会計情報としての役割にすぎず、日常の経営管理に一体化したものになっていない傾向がみられるところやフランスのようにシステム的に変更した国もみられる。我が国では、中央政府段階では特別会計に関する法律で初めて発生主義による財務報告が制度化されたが、あくまでも現金主義による予算決算制度の追加参考情報としての位置づけであり、公法としての取り組み及び運用面での限においてRechtsstaat型の改革過程にるといえる。この意味で会計専門職の機能も限定されたものになっていると考えられる。また、地方政府の自治体会計では現在3つの発生主義モデルが併存しているが、これも法的な位置づけがなされていないこと及び財政健全化法制とも関連性がないことから機能が十分発揮できない状熊にあるといえる。今後も継続して改革過程を監視していくとともに、法的な制度化が実質化する要因を明らかにすることが課題である。
すべて 2008 その他
すべて 雑誌論文 (4件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
会計と監査 第59巻第5号
ページ: 21-23
ページ: 24-27
会計と監査 第59巻第6号
“What matters in legislators' information use for financial reporting? The case of Japan" Implementing Reforms in Public Sector Accounting(Coimbra University Press)
ページ: 517, 377-392
http://www.zam.go.jp