申請書における計画にあるとおり、本年度はこれまでの調査研究を継続しながら、主に準備をおこなうのがねらいであった。これに従い、1.研究代表者のフィールドワークによって既に蒐集してあったデータや資料の再整理やデジタル化をおこなった。具体的には、対象地における行政機関が作成した統計的資料などの整理とデータ加工、農家が作成した文書など現地資料のデジタル化、過去に試みた聞き取り調査の調査票の整理と再点検、等である。2.フィールドへの再エントリーを試みた。なかでも、北海道根釧地方については、本研究費分も含めて数次にわたり現地を訪れ、代表的な農家に対する準備的なインフォーマント聴取に加え、最新の概況についての機関聴取、若干名の一般農家に対する質問紙法によるパイロット的聴取調査をおこなうことができた。この作業を通じて、研究作業の一部に酪農学園大学との共同が実現した。来年度はこの成果の上にたちながら本格的な調査および報告書の執筆を開始する予定である。他方のフィールドである北空知地方・山形県庄内地方については、文献サーベイなどの準備作業を別途おこなった。来年度が本格的な再エントリーとなる予定である。3.村落研究および質的分析法についての研究を継続的におこなった。村落研究の面では、とくに農民の学習活動について、文献サーベイや学会参加を通じて広く情報を得ようと試みた。質的分析法については、その最新の成果であると思われるデンジンらの『質的方法ハンドブック』の翻訳作業にかかわりながら、とりわけインタビュー論や著述の倫理、調査倫理などについて、新たな見地を得ようと努めた。来年度以降は、こうした質的研究に関する吟味の議論を農村研究においていかに活かしてゆくかが課題となる。本年度は以上のように準備的段階にあるため、論文や学会での公表はまだしていない。
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