本研究は、「視覚経験と社会的世界の再帰的編制」をテーマにした、視覚社会学的な身体-自己像研究である。2年目である平成18年度は、前年度調査をもとに作成した画像データベースによる自叙的イメージ分析を進めながら、データベースの再設計を含む、視覚データ研究の分析/提示法開発に注力した。 1.自叙的イメージ研究:画像データベースの構築と分析 被験者149人が撮影した総計3847点の自叙的写真(「私は誰?」という問への答としての写真)と被験者自身による写真説明(被験者1人につき10点)とを含む画像データベースを再設計一再構築した。スクリーニングの結果、写真1430点を分析対象として、被写体の種類、ならびに被験者の自己呈示との関連づけという観点からコーディングを進め、成果をデータベースに反映させた。 あわせて、上記被験者から募った14人に対して、新たな撮影テーマ(大学-友人-家族-身体-"私")による追加写真撮影を依頼した。付け加えられた自叙的写真は、それらを材料とするインタビュー(=写真誘出的インタビュー)にふされ、そうしたインタビューのトランスクリプトとともに、もうひとつの自叙的イメージ・データベースへと現在集約されつつある。 2つのデータベースは平成19年度の分析・総括作業に引き継がれる。 2.経験世界の可視化法研究:美術館経験のヴィジュアル・スタディ 視覚データの蓄積・分析法/提示法を開発・整備する目的で、平成17年度にひき続いて福岡市の公立美術館の協力を得て、計3回の来館者調査を行なった。調査は、来館者自身による館内写真撮影と写真誘出的インタビューとによって構成された。調査結果は、活動域が制限された条件下でのイメージ生成/言説生成にかかわる視覚社会学的研究の方法/手法開発、という観点から分析・考察され、また、視覚データの配列・構成に重きをおく成果提示法開発に活用された。
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