初年度は、主に分析対象の予備調査と参与観察によるデータベース作成の準備を行なった。調査対象は、信州大学教育学部平野吉直教授の協力によるキャンプ実習と雪上スポーツ実習、奈良教育大学岡村泰斗助教授の協力によるキャンプ実習と子供リバーツーリング教室、黒姫山UCDiパドリングスクール主宰石川義治氏のスキースクール、御在所岳藤内小屋佐々木正巳氏および山岳ガイド二村秀広氏の協力による登山者集団であった。 研究対象は、1.公的学校教育の学生 2.野外活動の教室に参加する生徒(大人および子供) 3.趣味として野外活動をする人々に分類される。1.2.のケースにおいては、主に「参観」という形態をとり、ビデオ撮影等の記録を残した。3.の場合は、自然なコミュニケーションの場を作る必要上ビデオの使用やメモ作成に制限があり、現場に複数回参加することで観察の密度を濃くすることによりその限界を補った。これらの調査結果は、複数年の調査を比較検討することによって分析的意義を持っものであり、来年以降の調査結果とあわせて分析する。また、3.のカテゴリーの集団の観察において、ごく自然に進行する会話の中に教育的要素が散見する事実がわかり、今後、日常の会話との比較検討で実証することにより分析していく。参与観察による分析と平行して、1.フィールドワーク、エスノメソドロジーに関する文献調査 2.日本およびアメリカにおける野外教育に関する文献調査を行なった。 研究成果については、来年度担当する大阪大学大学院言語文化研究科の授業において「フィールドワーク入門」を開講し、言語文化研究の授業でフィールドワーク実習を始めて取り入れることで、教育的成果につなげていく。また、2006年5月刊行の言語文化研究プロジェクト2005「アメリカ文化研究の可能性」の報告書において、「「野外教育と冒険-アメリカ的「冒険」の概念再考」という論文を発表する。
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