本年度も昨年度に引き続き、さまざまなアウトドア現場のフィールド調査を行なった。信州大学教育学部平野吉直教授の協力により、キャンプ実習と雪上スポーツ実習を継続して見学・調査し、同一プログラムの2年度にわたる実地を取材することにより、比較資料としてのデータを収集することができた。この調査は、さらに継続的に行なうことにより、野外教育の専門家育成のためにプログラムされた教育現場の「生徒」(将来の教育者)の共同体意識を中心とした意識変動の動向をつかむための貴重な資料を提供することが期待できる。さらに、この成果は、本研究の中心テーマである後述の一般のアウトドア教育現場における生徒間コミュニケーションの様態を分析する上での比較資料を提供する。 本年度の調査の特徴は、「アウトドアの教育現場」をいわゆるアウトドア・スクールに限定せず、山岳会の新人研修や、さらには、山小屋などで「偶然」出会った登山者同士の会話などに表れる「教育的」言説等にも着目し、このような「出会いの場」も広い意味での「教育現場」と捉える視点を導入したことにある。御在所岳藤小屋(三重県)は、このような機会を提供するフィールドとして本研究における中心的な調査現場となった。パブリック/プライベートという視座を導入し、商業的要素の強いアウトドア・スクールから、インストラクターと生徒間の人間関係に個人的つながりの要素の強い山岳会や山小屋の常連に至るまでのコミュニケーションを観察・調査した。本年度の具体的成果としては、大阪大学大学院言語文化研究科で開講する授業において本研究のテーマ(アウトドア現場での共同体意識調査)に基づきフィールド調査の実習授業を実施し、本研究の教育への適応性を確認したことにある。また、調査結果の一部は、2007年5月刊行の言語文化研究プロジェクト2006「アメリカ文化研究の可能性」の報告書において公表する。
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