本年度も、引き続きアウトドア活動の現場におけるフィールドワークによる取材を通して、本研究の課題であるアウトドア活動におけるコミュニケーションの観察と資料収集を中心に研究を行った。 本研究の拡大テーマである教育現場に限定しない一般登山者、ハイカーの仲間(共同体)形成にかかわる諸相に関する定性的データの収集については、1.ガイド等の指導2.登山グループ(山岳会、サークル等)3.知人(夫婦、家族を含む)同士4.単独というカテゴリーを設け取材を行い、指導者/受講者という画一的な教育現場では起こり得ない「教え」について監察し、(必ずしも「生徒」であるという意識のない場合も含む)「生徒間」のコミュニケーションの意義について確認できた。 2008年の9月に本研究の主たる研究フィールドのひとつの三重県御在所岳藤内小屋付近が水害に見舞われ、山小屋が半壊するという事故があった。調査者は、災害復興ボランティア活動に参加し、各種山岳会、個人登山者が協力し合いながら作業する現場に参与し、非常事態における共同体意識の発現の諸相についての体験的観察を行った。「かかわり」「思い入れ」といった感情とボランティア行動との関係、調査観察よりも「参加」の度合いの高いフィールドワークにおける調査者の「参与」と「観察」に係わる議論(「客観的観察」の可能性と問題点)を含め、継続的な調査を行っていく。 本研究の最終年度にあたり、過去4年の研究を1、組織的アウトドア教育現場(大学における野外教育の授業等)2.小グループの教育現場(クライミングスクール、スキースクール等)3.非組織的教育現場(個人登山者間のアドバイス等)に分けて、調査結果の分類作業を行った。
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