国際的な動向として、2005年、オランダ、イタリアなどで障害者差別禁止法が成立している。アジアでは、韓国において障害者差別禁止法が国会に上程され、審議されている。このような各国の障害者差別禁止法を収集し、その特徴を分析した。今後も、障害者差別禁止法は、障害者法制の中で注目される位置にあることが明らかとなった。 また、障害者差別禁止法において規定される「合理的配慮(reasonable accommodation)」の概念を検討するために、その初出である「障害をもつアメリカ人法(Americans with Disabilties Act(ADA))」の「合理的配慮」に関する検討を行った。1990年代末、アメリカ合衆国最高裁の判決以降、障害の概念が狭められる解釈がなされるようになり、「合理的配慮」についても狭められる傾向にあることが明らかになった。アメリカ合衆国に置いては「合理的配慮」の実効性が揺らいでいる実態があることがわかった。 国連では、「障害者権利条約」の審議が行われており、その中でも「合理的配慮」の概念が注目された。第6回障害者権利条約特別委員会に出席し、「平等と非差別」「労働」「教育」などの条項における「合理的配慮」に関する議論を把握することができた。 各国の障害者差別禁止法の成立とその特徴を把握するとともに、国連・障害者の権利条約の審議を分析し、その中で「合理的配慮」の意義と実効性を検証することが課題である。
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