本研究の目的は、日本の美意識と名誉概念の関係について検討し、一般的には、表現と規範の関係について、具体的には、ノブレス・オブリージュ(位高ければ徳高かるべし)の日本固有の文化的特性について文化社会学的に明らかにすることである。研究の結果、次の知見等が得られた。 1.社会学における名誉概念の展開(とくに、ジンメルやデュルケーム)を再確認し、美意識と名誉概念の結合であるノブレス・オブリージュについて、パレートのエリート概念、オルテガの貴族主義的大衆論との関連において一般的に考察した。 2.山本常朝の『葉隠』(1710-16)と新渡戸稲造の『武士道』(1899)を近世/近代における武士道思想の差異と展開として部分的に検討した。 3.特攻隊の実態や隊員の心情や精神に関連する資料(関係専門家へのインタビュー記録など)を研究協力者の協力を得て「知覧特攻平和会館」や「鹿屋基地史料館」(鹿児島)で収集した。 4.日本の各界の指導的地位にある人物、15名(政治家、企業経営者、歌舞伎俳優、刀匠、宗教家など)に対して、美意識や名誉についてどう思うかに関連して「聞き取り調査」を実施した。 5.ロシアのモスクワやサンクトペテルブルグにおいて、ロシアの美意識や名誉について、企業家、ロシア正教神父、バレリーナ、バイオリニスト、柔道家など9名に対して、研究協力者の協力(通訳・翻訳)を得て「聞き取り調査」を実施した。
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