日本の美意識と名誉概念の関係を検討し、一般的には、表現と規範の関係について、具体的には、ノブレス・オブリージュ(位高ければ徳高かるべし)の日本固有の文化的特性について、文化社会学の視点から明らかにしようとし、次の知見が得られた。 1.美意識と名誉の関係について、表出的行動概念や、社会学的名誉概念(ヴェーバー、ジンメル、デュルケーム、ゴフマン、バーガー)を検討した。 2.美意識と名誉概念の結合であるノブレス・オブリージュに関して、一方において、山本常朝の『葉隠』、新渡戸稲造の『武士道』、三島由紀夫の『葉隠入門』などを吟味し、近世/近代/現代の武士道思想の差異と展開における表出的行動性と主体的倫理性の関係を浮き彫りにし、他方において、パレートのエリート概念、オルテガの貴族主義的大衆論との関連においてノブレス・オブリージュの社会学的な意味を確認した。 3.「切腹」の歴史的、社会学的な検討、「特攻隊」関係の文献・資料・聞き取り調査結果の検討により、ノブレス・オブリージュの「ラディカルな形態」に焦点をあてた。 4.日本の各界の指導的人物(政治家、企業経営者、歌舞伎俳優、歌劇俳優、刀匠、宗教家など)21名に対して、モスクワやサンクトペテルブルグにおいて企業家、ロシア正教神父、バレリーナ、バイオリニスト、柔道家など9名に対して、美意識や名誉についてどう思うかに関連して「聞き取り調査」を実施し、ノブレス・オブリージュの「今日の形態」を明らかにした。
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