平成18年度における研究実績は、大きく次の4点に整理することができる。 1)非行観に関するこれまでの調査データの再分析 これまで山口県で行われてきた青少年調査のデータについて、類縁化作用という観点から再分析を行った。その結果、非行観に関する類縁化作用が、一定の論理的な序列に従って、精緻化されることを発見した。ガットマン・スケールを用いて整理すると、4935票のデータのうち93%がこのモデルを充足することがわかった(高橋2007)。 2)道徳的社会化に関する類縁化アプローチの理論的基礎づけ 上記の経験的知見をもとに、道徳的社会化を<類縁化アプローチ>の観点から再定式化する着想を得た。個々の規範が類縁化されて機能していること、道徳的社会化はそうした規範の類縁性が精緻化される過程であることを理論化した(高橋2007)。 3)台湾の青少年の規範意識に関するインフォーマント調査と調査票調査 これらの理論的・経験的知見を発展させるために、台湾の青少年に関するインフォーマント調査、ならびに調査票調査を行った。インフォーマント調査を通じて調査票の設計と改訂を行ったうえで、学校のクラス単位での集合自記式による調査票調査を実施した。その結果、中学2年(429)、高校2年(155)、大学生(237)の合計820票の回収を得た。 4)オーストラリアの青少年の規範意識に関するインフォーマント調査 さらに、シドニー市において、中学・高校の教員とそのOBを対象者とするインフォーマント調査を行った。日本や台湾で行ってきた調査票では、一部倫理的・宗教的な問題が生じる恐れがあるため、調査票の部分的な改訂を行った。
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