本年度が研究の最終年度にあたるので、研究を総括すべく、次の3つの課題を遂行した。 1.秩序問題の理論的研究 秩序問題の鍵概念である規範に焦点をあてて、規範をめぐる3つの問いの考察から出発して、規範の生成論的説明と機能論的説明を試みた。 2.近代社会と秩序問題 近代社会の構造と秩序をどのように捉えるかを考察した後、秩序問題が第2次世界大戦後の社会学理論において、どのように論じられてきたかを明らかにし、さらに秩序問題から、自由、正義、公共性の問題へと至る道程を展望した。 3.日本人の規範意識の変化 日本人の規範意識の変化を明らかにする作業の一環として、高校生の規範意識の変化を、2時点の質問紙調査の計量データの分析から捉えた。その結果、2001年から2007年へと至る6年間に、(1)高校生の規範意識は高まっていること、(2)ポスト近代的な学歴観や職業観ではなく、あの高度経済成長時代を彷彿とさせるような近代的な学歴観や職業観が復活していること、(3)性別役割分業意識への賛成の増加と保守意識が高まっていることが明らかになった。
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