本研究は、「ケアラー」が追い詰められる現象を明らかにし、またそれを通して「ケア行為」の本質を探っていくことである。家族ケアラー、ケア労働者の追いつめられる現象を比較検討しながら、児と高齢者、家族ケアとケア労働、等のケアの種別、領域を超えた「ケアラーの追い詰められ現象」の問題の共通基盤から「ケア行為」の本質を探っていくことが目的である。 本年度は最終年度として、今までのとりまとめの作業を行った。具体的には、健常児の育児と障害児の育児、高齢者介護の比較を通して、家族ケアラーの追いつめられる現象に共通基盤があるか、あるとするとどのようなものかについて検討を行った。またさらに、ケア労働者と家族ケアラーの比較を通して、労働としてケアを行うことと家族としてケアを行うことが、追い詰められ現象にどのように関連するのか、分析のとりまとめ作業を行った。 健常児の育児、障害児の育児・療育、高齢者家族介護等の家族ケアに関する分析においては、「役割拘束」、すなわち、「家族ケアラーはこうあるべき。」といった社会から家族ケアラーに課せられる役割に拘束され、ケアラー自ら自身の意識を縛っていくことが、程度の差がありながらも、どの家族ケアラーにも共通して見られ、家族ケアラーの追い詰められ現象の共通基盤の一つと考えられた。またさらに、家族ケアラーとケア労働者との間に、社会状況の差がありながらも追い詰められ現象の共通基盤があるかどうか、分析を行った。
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