育児や家族介護を行う家族ケアラー、介護や看護を職業として行うケア労働者といったケアラーが追い詰められていることが社会問題となっている。ケアの種類を超えてこのような現象がみられるということは、ケア行為の中にケアラーが追いつめられる要因があるのではないかと考え探索的研究を行い、以下の示唆を得た。ケアの受け手から「絶えざる欲求」を向けられる中、ケアラーは、「相手(ケアの受け手)」と「自己」のどちらの欲求を優先させるかの葛藤状態に身を置いていた。「相手」の欲求を優先することが、ケア規範からみてケアラーに期待される行動である。しかし、これを持続させると、ケアラーは「自己の喪失」を経験していた。一方、ケアラーが「自己」を優先させると、特にケア・コミットメントの高いケアラーは、自罰する傾向がみられた。以上より、ケアラーの追い詰められ現象に関わりのあるケア行為の要因として、絶えざるケア欲求、役割拘束性、自己をとるか相手をとるかの葛藤、自己の喪失、自罰、自己侵襲的責任の負担、が示唆された。
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