平成17年度調査計画のうち、(1)日本の事例研究については一部変更を行い、また(2)イタリアの事例研究については、ほぼ予定通りの実施となった。 (1)日本の事例研究においては、予備調査対象としていた福祉系NPO法人について、介護保険制度の制度改正等、外部の大きな変化と、NPO法人組織がもつ内的な課題とを整理した。その上で、制度変更に対しては、「地域包括支援」での「モデル事業」を、長野県の「NPO/県の協働事業提案制度」に基づき提起すること、またその提起の過程で、組織内の学習意欲を高め、あらためて地域ニーズを見直す中から、従来の制度的枠組では対応困難な諸課題を見定め、その解決にむけた地域運動を組織していくことの必要性が明らかとなった。すなわち、自治体とのフォーマルな協働、NPO組織内・間の、学習や調査・研究を軸として協力関係、地域住民の社会運動とのタイアップの三種のネットワークづくりが、非営利・協同セクターにとって必要不可欠の課題であることを確認した。 (2)イタリアの事例研究においては、革新勢力の強いボローニャの社会的協同組合と、保守色の濃いヴェネト地域の社会的協同組合との比較調査を行った。イタリアにおいては、非営利・協同の取り組みが大幅に制度化される中、その先にある同セクターの社会的役割・機能について、かつて見られたようなダイナミズムが減退する傾向にある。これに対して、保守、革新を問わず、どのようなイノヴェイティヴな取り組みが地域で展開しているか、事例採取を行った。その結果、地方分権化の進展の中で、住民自治による地域の意志決定プロセスに、非営利・協同セクターが重要な役割を占めていること、従来あった自治体との連携のみならず、労働組合との連携により、雇用の規制緩和を再規制しつつも多様な働き方を許容する動きが広まっていること等、非営利セクターと社会との接合部分が多重化してきていることを確認した。
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