本研究の目的は、イタリア、日本におる非営利事業組織の社会的役割と機能を実証的に比較検討することにある。EUでは、「欧州社会モデル」にて提起された「知識社会への移行」と「社会的排除及び貧困との闘い」を軸に、各種の政策展開が進行してきた。イタリアではこうしたEUの決定を受けて、「貧困と社会的排除に抗するナショナル・アクション・プラン三カ年計画(2003年〜2005年)」を発表した。この報告書では、絶対的貧困層や高齢独居が近年増加傾向にあること、所得配分、雇用保障の地域間格差が依然著しいこと、障害者、移民、ホームレス、子どもたち等において、リスクが顕在化しやすい現状が指摘されていが、その中で、これら「貧困」と「排除」に対して「非営利セクター」の役割が強調されている。 以上のような前提のもと、本研究の具体的な方法論としては、イタリアにおける非営利事業組織の代表的な存在としての社会的協同組合に着目をし、同組合が、「排除との闘い」を具体的にはどのような形で担っているのかを明らかにした。特に、ポーロニャ及びトレント、ヴィチェンツァの、政治的・文化的環境の異なる地域において、同協同組合が、自らを規定する社会的諸アクター(行政、市場)とどのような相互関係を構築してきたのかを探求課題とした。 その結果、イタリアにおいて、非営利セクターは、一方で「市場化」や「規制緩和」への「適応」や「利用」を試みながらも、他方でそれらに対する「社会的介入」あるいは「再規制」という両ベクトルのアクションを取りながら、独自の福祉供絵主体としてのあり方及び、社会的排除との闘いの方向性をさぐりあててきたことが確認できた。 また、日本については、比較的小規模な自治体を中心に調査を実施し、その、おける非営利協同組織の構成と、行政・市場との関係づくりを把握した上で、上記のイタリアの特徴とも考えあわせた際、どのような組織的・制度的革新が必要となるか、提起をおこなった。810字
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