平成17年度の活動として、予期せぬ妊娠に悩む母親の支援と子どもに恵まれない夫婦の援助を目的に設立されたNPO法人「環の会」の活動実績を概観し総括すること、ならびに、養子を迎えた育て親についての理解に努めた。 環の会の活動は多岐に渡るが、重要なのは、「夫婦面接」、「育て親研修」、「家庭訪問調査」である。この3つの活動によって育て親が確定し、血縁に依らない新しい家族が誕生するからである。とりわけ、「育て親研修」は、血のつながらない子どもをわが子として受け入れるために、夫婦が通らなければならない最大の通過儀礼として機能する。 今年度は、これら「環の会」の活動・運営を一手に担っていた代表が、突然の病に倒れ、存続の危機を迎えた。待機している赤ちゃんが数多くいたため、代表抜きに新しい育て親を開拓する必要性に迫られた。そこで、筆者は複数の育て親と協同しながら、夫婦面接、育て親研修、家庭訪問調査を担わざるを得なかった。特に「育て親研修」については、代表が行ってきた研修の本質を損ねない程度にアレンジし、また、代表による研修の問題点等をディスカッションしつつ、新しい研修を試行錯誤した。研修後は家庭訪問調査に出向き、場所を変えて「夫婦」を評価するポイントを模索した。 一方で、育て親全員を対象とした質問紙調査を実施した。これは、多くの育て親と接触する中で、共通の悩みや問題を抱えているがわかり、急遽、企画したものである。具体的には、「産みの親との関わり」および「コミュニティの中での関わり」等である(詳細な分析結果やこれに基づくインタビューは来年度以降)。 江戸期から現在までの養子縁組の変遷とその中での「環の会」を位置づけるための文献研究も実施した。また、今日の「特別養子縁組制度」が確立するプロセスでの議論を明らかにするために、雑誌分析も行った。 また、日本における海外養子の実態を把握するために、日本全国の民間養子斡旋団体を調査し、その中から数箇所の養子斡旋団体、ならびにこれを管轄する自治体へのヒヤリングにも参加した。
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