平成19年度は、平成17年度・18年度に引き続き、NPO養子あっせん団体においてフィールド研究を継続するとともに、官民の連携体制の実情を把握するために、日本における養子縁組関係機関へのヒアリング調査を実施し、諸外国との比較研究にも着手した。以下、具体的な内容を概略する。 (1)NPO養子あっせん団体ならびに当該団体から養子を迎えた家族へのヒアリング調査 今年度は、育て親のライフヒストリーを収集するとともに、「養子に対して、どのように産みめ親のことを語っているか」、「養子と産みの親との直接・間接のかかわりに、どのように対応しているのか」に焦点をあててインタビューを行った。さらに、団体へのインタビューを通じて、団体の産みの親支援の理念について、社会学的な視点から考察した。また、以下(2)と関連するが、民間団体であるがゆえの問題点や当該団体の課題についても検討した。 (2)養子縁組関係機関へのヒアリング調査 上記NPO養子あっせん団体の課題は、わが国における民間養子あっせん団体が共通して抱える問題であるといえる。これらの問題の根本は、わが国において「官民の連携」がとられていないことに集約しているような印象を受ける。子どもの命を、一民間団体が担うことには、どうしても無理がある。そこで、児童相談所関係者、他の民間団体、個人、熊本の慈恵病院などを訪問し、民間同士、ないし、個人と団体の連携の事例、児童相談所との連携可能性などを探った。 (3)アジア(台湾)における児童福祉団体へのヒアリング調査 アジア諸国の中でも、官民連携体制が著しく先進的である台湾において、民間団体のアドボカシー機能やネットワーキングについてのヒアリング調査を実施した。このような官民連携の成果が、一般社会への啓発、ならびに、施設養護偏重から家庭的養護(養子縁組・里親委託)を促進していることが伺われ、今後、より詳細な検討を加えるごどで、わが国への応用可能性が期待できると思われる。
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