本年度の研究課題は、(1)愛楽園入園以前のライフヒストリーの聞き取り調査、(2)対象・昭和初期における沖縄の社会情況に関する文献・資料の検索、(3)隔離所ないし患者集合所に関する社会学的・民俗学的考察、(4)ハンセン病差別の構成と構造に関する行為論的考察、(5)宮古・八重山群島区におけるハンセン病問題関連の文献・資料の収集、の5点に整理できる。 上記課題(1)は愛楽園、課題(2)および(5)は沖縄県立図書館で、それぞれ社会調査を実施した。課題(3)については、第80回日本社会学会大会での学会発表をもとに、論文「ハンセン病罹患者の〈居場所〉」に研究成果をまとめた。同論文では、療養所が構築されなかった時代のハンセン病罹患者は、「シマの〈隔離所〉への追放→放浪→行路死」という社会的転落のライフコースが開かれていたこと、そしてハンセン病罹患者に放浪を強いる当時のシマ社会の閉鎖性と貧困が、その背景にあったことを示した。 課題(4)については、社会科学基礎論研究会第8回シンポジウム(2007.7.21・大正大学)において、「差別と生」という題で研究発表を行った。差別論という問題系は、差別が人間の生に与える〈痛み〉やトラウマの異化というもう一つの問題系を内在させていることを論じた。
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