平成18年度の研究計画は、近代農法による稲作が盛んに行われる12月〜1月にクミッラ県農村に約1カ月間滞在し、各関係機関や農村居住者から聞き取り調査を行う予定であった。だが、バングラデシュでは、平成18年10月に予定されていた総選挙が、与野党間の激しい対立が発生したため延期された。その後も社会的混乱が続き、翌年1月に「非常事態宣言」が発令されたため、現地調査を翌年度に見送った。 そこで、平成19年12月20日から平成20年1月11日まで現地に滞在し、首都ダカとクミッラ県の各関係機関を訪問し、聞き取り調査及び文献・資料収集を行った。具体的には、BRAC(現地NGO)のTraining Center、ダウドゥカンディ郡エリア・オフィス、 Hat Chandina村ショミティ、じゃがいも貯蔵庫、メラプログラム(融資)による製釘工場、繊維屑工場(以上クミッラ県)及びヘッド・オフィス(ダカ)、BARD(Bangladesh Academy for Rural Development;バングラデシュ農村開発アカデミー)、UNICEF Bangladesh、 Ministry of Education、 Ministry of Primary and Mass Education、 Ministry of Commerce、 Cabinet Division、 Female Secondary School Assistance Project、 Female Secondary Stipend Project等を訪問した。この他、クミッラ県の農村にて戸別訪問調査を行った。 クミッラ県は、アメリカ主導によるコミラモデルによって近代農法(乾季のHYV)がいち早く普及・拡大した地域である。それに伴い、灌漑設備や農薬・化学肥料の使用も他県に先駆けて普及しているが、長期に及んでHYV作付けを行ってきた農地では、数年前から稲が育たなくなっている。その原因として、化学肥料や農薬の大量使用による地力の消耗が指摘されている。また、灌漑設備の大量使用により、砒素の問題が深刻化している。それらは、農村居住者の生活状態に悪影響を与えている。とりわけ、そのしわよせは、貧困女性や子どもに及んでいる。
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