今年度の研究成果の第1は、Ordered Logit Modelをもちいた教育の各移行(高校進学、高校卒業、大学進学)の同時分析をしたことである。日本のSSM調査データを使用しながら、教育の各移行において到達する学校のランク(高校は非進学・非卒業、職業高校、一般高校、進学高校:大学は非進学、短大、一般大学、有名大学)の中で、より上位に到達させる要因を検討した。その結果、親の職業や学歴、出身家庭の経済力・家族構造、文化的再生産も無視できない影響を及ぼしていたが、中学時の成績がより強い影響をもたらしていた。つまり、出身家庭による教育格差は安定的に持続してきているが、それ以上に学業成績にもとづく選抜が優勢であり、日本社会の教育達成は全般メリットクラシー説に適合的であった。この成果は、第40回数理社会学会大会報告において報告した。 もう1つの成果は、Conditional Multinominal Logit Modelによる世代間移動と世代内移動の同時分析に成功したことである。既存研究では、これらが分離されて研究されてきたが、同モデルにデザイン行列変数を投入することで、移動表分析で多用されてきたログリニア・モデルと同等な分析を世代間移動と世代内移動についておこない、さらに他の個人レベル変数(たとえば教育年数)の投入も可能なモデルとなった。SSM調査データを分析した結果、現職の階層的地位は、初職に強く左右されながら、世代内移動によってその初職後からやや変化する、というものであった。この知見は、従来行われてきた世代間移動表による研究が、初職への世代間移動と、その後の世代内移動との現職にたいする効果を分離せずに検討してきたことを明らかにできた点で重要であった。この成果は、第41回数理社会学会大会報告において報告した。
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