インタビューで収集された語りデータに基づいて、社会科学はなにをどこまで主張しうるのだろうか。これを根源的な問いとして研究を進めてきた。とりわけ、ひとの「変化」をどのようにとらえうるのかが関心であった。「いまここ」におけるインタビューやおしゃべりにおける談話が、過去の経験や思い出、その・それにともなう「変化」とどのような関係にあるのか。 女性3人組に昔の写真を見ながら「思い出」おしゃべりをしてもらい、それを録画してミクロ相互作用分析するということを行った。20歳代2組、30歳代から60歳代までそれぞれ1組ずつの6組のセッションを行った。その結果、容貌などが「変わった」という発言は散見されたが、あるひとの「内面的」なものが変わったという発言はほとんど聞かれなかった。状況設定上の制約であろうという示唆が協力者から得られた。2度の学会発表を通じて研究成果を報告し、フィードバックを得ることができた。 テレビのトーク番組を素材とするミクロ相互作用分析も行った。NHK総合の『スタジオパークからこんにちは』と『徹子の部屋』で、同じゲストが数ケ月の間隔で出演した番組を取り上げた。「同じ」話題の語られ方に違いが見られ、その「構築性」を感じることができたが、差異よりも類似性のほうが大きかった。「オリジナルなイベント」とその「語り」との関係については、「真」や「偽」といった二分法的な真理値というとらえかたが不適切であることが示唆された。この結果は紀要論文としてまとめ発表した。 ビデオカメラを複数台使用してのミクロ相互作用分析の方法についても実績を蓄積し、方法的な検討も行った。技術と機器の進歩にともない、同期がやっかいな複数台使用ではなく、ハイビジョンカメラ1台での録画が便利で有効であることが判明した。(752字)
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