第1に、社会サービスの提供と4つの主体(国家、市場、社会、NGO)に関する図式を用い、中東地域注目して検討し、また、国際協力の推進主体に関する図式も提示した。 第2に、エジプトでは新しいNGOとしてエジプト・フェアトレード・センターが、シナイ半島のベドウィン女性たちの組織と連携、アフリカ地域におけるイスラムNGOの拡大とその経緯、アジア地域ではインド西部のグジャラート州における、巨大なNGOである「自営女性労働者協会」(SEWA)に注目し、刺繍作業など女性による生活向上運動など、世界諸地域で展開されているNGO活動のうち、日本でほとんど報告されていない事例を検討した。 第3に、中東地域においてイスラムNGOがNGO活動の主要な部分を占め、とくに、社会サービスの提供(医療サービス時には教育サービス)に腐心し、国家のそれに代替する活動を展開している。イスラムが当初から有した福祉サービス提供に類似する。中世における病院運営、オスマン帝国で発展した「給食所、イマーレット」などの仕組みが該当し、ダマスカスでは、16世紀に設置された「給食所」が、限られた規模であるけれども、活動を継続している。トルコにおいては、イスラムNGOに該当する民間のイスラム集団は、90年代の自由化の中でイスラム教育の拡充を進めている。 イスラム主義が強調する福祉サービスの提供を、イスラムが当初から有した福祉サービス提供の組織とその仕組みと関連で検討することで、今日のイスラムNGO活動の仕組みも明確になる。
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