私は2006年度末に『救命・消火の最前線を担った少年たち-1925年北但馬震災に関する旧制豊岡中学校604名の作文集』を【編集用未定稿】として刊行し、とりあえずご存命の執筆者及び豊岡高校と豊岡市立図書館その他に配布したが、約1200篇の各作文の表題が画一的であるため、各作文の内容を目次から把握することが出来ない欠点があった。本年度はまず全作文を再読し、それに記されている重要な興味深い内容を拾い出して、それを表現する標題を創作する作業を行った。その作業を拙速で行ったため10箇所ほど誤植が生じ、それらを訂正する作業が加わって、最終的な刊行が本年3月末にずれこんだ。 作文の執筆者との交信、聞き取り調査結果その他を収めた資料集も、作文集と同じ事情で急いで【編集用未定稿】のまま刊行し配布したが、震災直後の同窓会=達徳会の機関紙特集号に多くの生徒が寄稿しているのが見つかり、それらを追加して増補版の資料集を最終版として刊行する準備を進め、それは最終段階に達している。 1200篇の作文の内容分析を行って本編を刊行する予定で、すでに【消火作業】【救命作業】【家財道具の搬送】【被災者の避難先調査とその一覧表の作成】など、約50項目に及ぶ内容別に作文を分解する作業が終わり、その分析を開始したところである。それらの諸々の救援活動の全貌が明らかに出来ると考えている。 なお現地での資料収集としては米占領中の1948年に発生した福井地震および1965年の新潟地震に関して、近年続々と刊行され始めた各市町村・地域自治会・小学校などの回想記録類を収集する作業を重ね、近年の新潟中越地震に関しては現地を何度も訪れ、資料収集とともに住民からの聞き取りを実施した。福井地震に関しては結成直後の北陸・京都府・東海・東京都・北九州の各学生自治会連合が大勢の学生を送り込んで救援活動を展開したが、それを嫌った占領軍によって退去させられた事実もあった。『戦後四高学生史』がその経過を詳しく伝えている。
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