われわれの研究の主要な目的は、スポーツや芸能、ダンスなどの身体的パフォーマンスがリズムとどのように関係するかを調べることであった。 この目的を達成するために、まず一方において、パフォーマンスとリズムに関する過去の研究や文献を渉猟し、それらを詳しく調べることによって理解することをめざした。また、もう一方において、特定のパフォーマンスを選定して、それらの現場に足を踏み入れ、調査することであった。ここで選定されたのは、スポーツ領域ではサッカー(びわこ成蹊スポーツ大を中心とした関西学生リーグの参与観察と監督・選手へのインタビュー調査)とボート(龍谷大学ボート部の朝日レガッタにおける活動の参与観察と選手へのインタビュー調査)、また芸能では能(金春康之氏の公演取材とインタヴュー取材)、さらにダンス(黒田育世氏の公演取材)などである。これら両者の活動を平成17年度から18年度にかけて並行して行いながら、考察のための基礎的なデータ収集に努めた。さらに、それらのデータと先の理論研究を相互につき合わせることによって、パフォーマンスとリズムとの関係についての探求のための研究会を重ねた。 そして、平成19年にいたって、以上のような基礎的な作業にもとづいた、われわれの研究の成果を日本社会学会などいくつかの学会において発表するとともに、それらの一部を『龍谷大学大学院研究紀要』等に掲載してきた。パフォーマンスの研究は社会学の領域においては、いまだ確立されていない状況にあり、そこに、われわれは「リズム」という方法論からのアプローチを試みた。リズムという視点にこだわったのは、リズムを介してパフォーマーの身体が生成するという考え方に由来しており、この点から、パフォーマンスを「身体の社会学」として考察することが可能となるからであった。われわれの調査研究にもとづく身体の生成論的研究は社会学の領域に新しい知見をもたらすといえよう。
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